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その日のうちに、母様に確認され。
間違いない旨返事をすると、それで恭一郎様との婚姻は正式なものとなった。
邸内は天地が引っくり返るほどの大騒ぎかと思いきや、皆の意見は真っ二つに割れているようだ。
あの兄妹がそんな関係になるなんて信じられないという者もいれば、こうなるのが遅いくらいだという意見もちらほら。
《貴女は本当に雪の精ですね、雪兎の君。私が浚ってしまいたくなるくらい、いつもそうして寒空の下にいらっしゃる》
噂話が嫌ならば、部屋に籠っていれぱいいのだけれど。そうすると、今度は気分が滅入ってしまう。
「今は止んでいるわ。今夜は降らないかも」
暗がりにぼんやりと浮かぶ庭は、どことなく寂しい。
雪でも降ってくれた方が安心する――なんて思うのは、雪の精気取りが過ぎるか。
《雪が降らずとも、気温はそう変わりませんよ。医師殿が襲ってきても、風邪引きの姫ではさすがに敵わない。体調は万全にしておかねば》
冗談とも本気ともつかない言葉に、無理に笑った。今は冗談にしておきたい。
「あ……」
部屋に入ろうとした途端、やはりどうしても外が名残惜しいように思える。
もう一度庭に目を戻すと、二匹の雪うさぎはまだ溶けずに仲良く並んでいた。
――この前はなかったはずの、赤い目をして。



