明日、雪うさぎが泣いたら



「もとより、不思議な出来事ですから。恭一郎様の情報の正確性を問うことはできません。でも、本当に情報をお持ちなのですか? お邸に入ったが最後、何も知らされずに囚われてしまうなんてことは」

「……ふ。疑ってもらえて何よりだ。ほっとしたし、いい傾向だな」

「……兄様のお家に遊びに行くだけなら、こんなこと言いません」


そこで喜ばれると腹が立って、ついその呼び方を持ち出してしまった。
それでも彼は表面上は涼しい顔をして、次の一手を考えるふりをしている。

通われるのではなく、私が招かれるのだ。
これまで再三それについての考え方を聞いてきたのだから、それだって当然の疑問だ。


「何も与えず、囲ったりはしない」


はっきり断言されたのに、余計に引っ掛かる言い回しだ。

「与えられるものが善いものだとは言っていないのだから、そのまま疑ってかかれ」――そう、本人から忠告された気がする。


「他には? 」

「それから……」

「私も参ります」



話が一区切りするのを待っていたらしい。
長閑が脇からすっと現れた。


「私は姫様付きの侍女です。何も問題ございませんでしょう? 」

「正しくは、長閑は私の親友だから問題ない、よ」


誘うのも躊躇われたから、長閑の申し出は涙が出るほど嬉しい。
怖いだろうに勇気を出してくれたのがありがたくて、泣きそうになるのを堪えて恭一郎様に目を戻す。


「それからもちろん、一彰に長閑に会う許可を。大体、一彰は私に会いに来るわけではないのだから、拒む理由はないはずです」


強い口調で言ったものの。
少し悩む素振りをして、程なく頷いてもらえたことに安堵の息が漏れた。