明日、雪うさぎが泣いたら



そこで嘘を吐かれたとしても、どうして責めることができるだろう。
それに、確めようもない。
これまでの経験から、恐らく何かをきっかけに少しずつ夢となって現れてくれそうだけれど。
それは確実ではないし、夢を見なかったからといって、与えられた情報が誤っていたとは限らない。
昔のことをここまで夢に見るようになったのは、つい最近のことだ。
子供の頃の方が記憶としてはより濃く残っていただろうに、あの頃はほとんど夢の男の子のことを思い出すことはなかったように思う。


「私だって、大人しくただお邸にいるとは限りませんよ? 家探しするかもしれないし、聞き込みだってするかも」


家探しはともかく、聞き込みをするなら今のこの邸でするべきだが。
恭一郎様や母様の許可なく、皆があの話をしてくれるとは思えない。
だが、黙ってじっとしていると思われたら困る――ないだろうけれども。


「その辺は、淡く期待はしていても、お前にはとても望めないことは承知している。だから、私も情報は小出しさせてもらおうか。一度にすべて伝え終わった途端、一夜にして逃げられてのでは堪らないからな」


あっさりと認め、当然だと条件を追加されてしまった。
それも仕方ないか。
不本意だが、恭一郎様にしてみれば至極もっともな要求だ。


「異論がなければ、正式に申し込ませてもらおう。どうだ? 」


求婚というよりは、まるで休戦前の交渉みたいだ。
不利なところがないか、出された要求が許容できるものかどうか、互いに表情を盗み見しながら思い巡らせているあたり。