「お前は私とともにいてくれるわけだ。私の持つ、そのもう一つの世界とやらの情報と引き換えに」
改めて言葉にすると酷い。
そう端的に言えないでいた私は、もっと。
「兄妹ごっこの延長ではないぞ。そうなれば、私は即刻私の邸に迎え入れたいと思っているし、一度捕まえたものをみすみす逃したりもしない。当然な。そんな私を、知らなかったなどと言うなよ」
「……あなたは兄ではなくなったかもしれないけれど、基本的な性格は変わっていないと思います。それに、反論は聞かないと仰ったのは恭一郎様の方です」
兄様と呼んでいた頃も、真っ直ぐな性格だと表現したことはないと思う。
優しくて甘いけれども頑固だし、筋は通すがその道筋はねじ曲がっていることもある。
でも、それを欠点だとは思わなかった。
それは、今も同じだ。
娶ると宣言されてから、もうしばらく経つ。
今の強烈な信じられない出来事と、夢の中のあやふやな思い出が入り交じり混乱したけれど。
あの時思ったような、手荒な手段は今の今まで何も取られていない。
「反論はなかったとしても、お前が言うことを聞いてくれるかどうかは別の話だろう」
そういえば、そんな啖呵も切ったような。
覚えていないと言い張る私を呆れたように眺め、ここからが本題だとばかりに続けた。
「無理に急ごうとは思わないが、約束はしない。その時がきて泣くな。それで泣かれたら、恐らく苛立ちのあまり煽られる」
「……泣いてなんか、あげませんよ」
この人は、本当に私をその対象にしているのだろうか。
兄だとは呼べない触れ方を幾度かされた今でも、どうにも信じられない。
それもまた、酷いのだろう。



