『さゆ、みつけた!』

後ろから両肩を掴まれ、薄暗い木陰で私は飛び上がってみせた。
少し、わざとらしかったかも。
かなり遅れて、悔しそうに唇を尖らせるのも。

『ほんと、さゆは隠れるのが下手だね』

でも、おあいこ。
呆れたように言う彼もまた、嘘が下手くそだ。

『そんなことないもん』

そう、違うんだから。
上手なんだよ。
だって、あなたには早く見つけてほしかったから。

『じゃあ、今度はさゆが鬼やる』

そんなことを言うなんて恥ずかしすぎる。
小さな私もそう思っていて、やる気もないくせに言ってみせたけれど。

『……それはだめ。鬼は俺だって決まってるんだ』