「……なに?」
「……っ」

 私に向けられた視線、言葉が先ほど火神くんに向けていたように、ひどく冷たいものだった。

 けれど、どうして……?


 こんな春哉くんが初めてで、戸惑いを隠せない。
 どうして春哉くんを怒らせてしまったのだろう。


「あの、私……春哉くんを怒らせて……」
「その理由をわかっていないの、本当にタチが悪いよ」


 ギュッと力強く腕を掴まれ、少し痛みが走る。

 春哉くんの表情、声、言葉、行動……私に向けられるものすべてが怒りを表していた。


 理由……春哉くんを怒らせてしまった理由。

 早く自覚しないといけないとわかっているけれど、焦りのせいか、なにも頭に浮かばない。


 どうしよう、このままだと本当に春哉くんに嫌われて……。


 いつまでも私が黙ったままだから、春哉くんが呆れた様子でため息を吐いた。

 そのあと、「あのさ」と春哉くんが口を開き、なにを言われるのか正直怖くて聞きたくなかったけれど、春哉くんの言葉に耳を傾ける。


「志羽。いつ俺がほかの男になびいていいって言った?」


 同時に、腕を掴まれていた手が離れていく。