「じゃあ私は違う車両から乗るね」
駅に着き、改札を通ったところで春哉くんに別れの挨拶をする。
けれど春哉くんが寂しそうな顔をするから、心がぐらりと揺らいでしまう。
「……志羽」
「だ、ダメだからね!電車に乗ったら私たちは他人になるの……!」
「志羽が俺と同じ高校を目指してるって知った時、志羽と一緒に登校できる日がくるんだと思って嬉しかったのに」
春哉くんの話を聞く前に耳を塞ぎたくなったけれど、外でそんなことはできない。
結果、春哉くんの話を聞いて「やっぱり一緒に行きたい」と言いそうになってしまう。
「ダメだよ、ダメ……」
耐えろ、耐えるんだ自分。
もし春哉くんと一緒に登校したら、初日から注目されること間違いなしだし、呼び出しを食らったり嫉妬の目を向けられたり……ぜんぶ私が悪いのだけれど、それは防ぎたかった。