「ほら、戸崎さんになにか喋ってあげて」
「……え」
春哉くんはスマホを私の右耳に寄せたまま、なにも話そうとしない。
スマホの向こうで『ぜったいに怪しい!』とか、『ちょっと春哉、聞いてる!?』という沙良先輩の声が聞こえてくる。
一体なにを話せばいいんだろう。
春哉くんの無茶振りに慌てていると、春哉くんが小さな笑みを漏らした。
なんとなく嫌な予感がしていると……。
「……っ!?」
突然左耳に柔らかなモノが当たる感触がして、くすぐったさのあまり変な声が出てしまいそうになる。
肩がビクッと跳ね、思わず振り返ったのが間違いだった。



