「君の場合は、イジメとは言えないだろうね」

今でもはっきり覚えている。高校1年の夏、担任の口から漏れたとどめの一撃だった。

私は全てにおいて中間に位置する女子高生だった。勉強の成績が特別優れているわけではなく、スポーツが万能というわけでもなく、特別美しいというわけでもなかった。だから、入学した日の自己紹介では、

「大野美紀と言います。これからよろしくお願いします」

と、なんの面白みもない挨拶をした。名前もいたって普通。すると、顔も知らない39人の生徒たちから、型通りの拍手をもらった。

それでよかった。高校生活は3年間。何もせず、1日を消費し続ければ、終わりがやってくる。帰宅後、机の上のカレンダーに向かい、4月8日を黒く塗りつぶした。

それからの日々について、正直あまり多くは語りたくない。クラスメイトから無視されるのは慣れていたし、何よりも孤独を選択したのは私だったので、それ自体は別に平気だった。

高校には無言のカーストと言う物が存在する。大きく3つの階層に分類することができる。最上位層は、誰もが羨むような美男美女、あるいは成績優秀、スポーツ万能な生徒のプレミアである。最下位層はその逆と言えばいいだろうか?そもそも相手にされることがないから、話題にもならない。それこそ、今私がしようとしているように、この世界から消えてしまったとしても、涙を流す人はいないはずだ。

肝心の私は、と言うと、恐らく中間層になる。つまり、どっちつかずだ。学園生活を楽しもうと思ったら、カースト最上位層の生徒たちとつるむ必要がある。俗に言うパシリだ。最上位層の生徒の要求に何でも答えなければならない。

私にはそんな器用な人生、できないんだよ。