「!危ねぇ…」

―まだ出て行かなくて良かった。

こっそりと、ひとり達磨さんが転んだよろしくやっている俺に彼女は気付かず、再び夕日に見入り出した時、俺は彼女の背中へと向かって行く。

俺が脅かそうだなんて馬鹿げたことを知らずに、彼女は季節先取りのマフラーを首に巻き直そうと外している最中だった。
ザッ。

―一歩、足を踏み出す。
背を向く彼女との距離は、歩幅3歩分だというところで、声をかけた。

「…おい!」