「かぐや」

「何?」
眠そうな声で俺のそばにくっついてきた。俺のことは抱き枕と勘違いしてるのだろうか。

「何故、俺の隣で寝てる?ちゃんと二段ベッドを用意しただろう!」

「だって寒いのよ!」

そう言ってまた俺にしがみついてきた。外では紅葉が色づき、秋が深まっていた。
時間は朝の6時だった。
寒い、寒いというかぐやのために、部屋の暖房をつけた。かぐやは素早くベッドから部屋の中央にあるコタツにもぐった。後頭部だけがちょこんと見えた。
俺はキッチンに行きお湯を沸かして、二人分のインスタントコーヒーを淹れた。かぐやにはミルクを多めにして渡した。かぐやは、ふぅふぅと息を吹きかけて冷ましている。
アパートで二人暮らしをしていた。間取りは2K。家賃は6万円。二人とも仕事に就いていない。しかし、家賃は滞納することなく支払えてる。

村から追放されてすぐにかぐやと合流した。待ち合わせ場所を決めていたからだ。
洞窟の檻から逃げられたのは良かったが、かぐやは外の世界がよくわからないみたいで途方に暮れていた。助けたことに責務を感じた俺は一緒に暮らすことを提案した。
当時の俺は十歳だったので、かぐやは俺のことを子供のように慕っていた。
かぐやは年をとらない。不老不死だ。顔つきや肌などの若さも十年前と変わりがない。
その間に俺は二十歳になり大人の体格になった。

「朝ごはん、私が作るわ」
かぐやはそう言って、冷蔵庫から卵を取り出し。フライパンで焼いた。
目玉焼きだった。他にもウインナーやキャベツなど用意をしていた。
今日は和風なのかと思った。日によって白ご飯だったり食パンだったりする。
ご飯は一緒に作ることもある。