「別に、信じられないなら信じなくてもいいよ。でも……少しだけ、アヤメと話す時間を俺にちょうだい」
「わ、私達が今さら話すことなんてないでしょう? まさか、あの頃の思い出話なんてできるはずもないのに……」
「そうだな。じゃあ、思い出話なんてしなくてもいい。その代わり、俺はこれからの話をアヤメとしたい」
真っ直ぐに、今の正直な気持ちをアヤメに告げた。
そもそも俺はアヤメともう一度きちんと話して、まずは"あのときのこと"を謝らなければいけない。
「……もしかして、俺とふたりきりになると困る理由でもある?」
「ユウとふたりきりになると困る理由って……?」
「いや……もしアヤメに恋人がいたり、結婚してたら、それは迷惑になるだろうなと思って……」
迷っているアヤメに食い下がれば、アヤメが一瞬目を泳がせた。
自分で言っておいて、"もしも"を考えたら胸が痛い。
もしも、もうアヤメが他の誰かのものになっていたら?
多分、もう何も手につかなくなって、俺は今度こそ最低な人間に成り下がるんだろう。