愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 

「も、申し訳ありません。やっぱり私が試着してもご参考には──」


 そう言って指輪を外そうとしたアヤメの手を、俺は咄嗟に掴んで引き止めた。


「外さなくていいよ。だってそれ、本当にアヤメによく似合ってるし」

「え……?」

「……まだ気づかない?」

「え、えっと……」

「まぁ……わからなくても、当然か。あれからもう、十五年も経つんだもんな」

「十五年……?」


 俺の言葉に、アヤメがいよいよ戸惑いの声を出す。

 アヤメは俺が俺だと気付いたら、どんな顔をするだろう。

 もしかしたら、俺なんかには会いたくなかったと罵られるかもしれない。

 そんな不安を抱きながらも、俺が被っていた帽子とマスクを外せば、アヤメの大きな目が更に大きく見開かれて、みるみるうちに潤んでいった。