「で、では、少しだけ……」
「あ、待って。指輪は俺につけさせて」
「え?」
「一応、本番のシュミレーションみたいな。こういうのって、本番は緊張して上手くできなかったりするだろ?」
そうして俺は、口実を作ってアヤメの綺麗な左手に触れた。
たったそれだけでまた目に涙が滲みそうになって、胸が締め付けられたように苦しくなる。
……好きだよ、アヤメ。
もう何度、夢の中で想いを告げたかわからない。
アヤメの左手薬指に指輪を通すのはこれで二度目だ。
一度目のときは恥ずかしくて冗談交じりにしかできなかったけれど、今なら俺はアヤメの目を見て真っ直ぐに自分の気持ちを伝えられる。



