愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 

「はい。ちなみにですが、お相手の方の指のサイズはわかりますか?」

「そうだな……ちょうど、店員さんと同じくらいのサイズだと思う」

「でしたら、六号ですね。一度、こちらの商品をお手に取って見られますか?」

「ありがとう。じゃあ……試しに、店員さんがつけてくれない?」

「え……わ、私がですか?」


 俺からのとんでもないお願いに、さすがのアヤメも今度こそ面食らった顔をして固まった。

 ヤバイ、可愛い。

 昔から、アヤメの戸惑う顔を見るのが俺は好きだった。

 まさに、好きな子を苛めたくなる男子の心理なんだろう。

 そう考えると、俺は今でもくだらないクソガキのままなのかもしれない。


「俺が指輪を贈りたい相手と、店員さんがよく似てるんだ。だから、店員さんにつけてもらえたらどんな感じかイメージしやすいかなと思うんだけど」

「は、はぁ……」


 困った顔すら愛しくて、今すぐにでも抱きしめて、ここから攫ってしまいたくなる。

 ああ、そっか。やっぱり俺は、あの頃と少しも変わってなんかいないんだ。

 俺は、もうずっと前から、アヤメが欲しくてたまらなかった。

 十五年前から一ミリも変わらない。

 俺はアヤメが好きで好きで、他の誰にもアヤメを渡したくないガキのままだ。