「気になるものがあれば仰ってください」
「……たくさんあって、どれがいいかわからないな」
「ご予算などはございますでしょうか?」
「予算……は、まぁ、とりあえずいくらでも構わないけど」
とにかく今は、少しでも心が落ち着くまでの時間を稼ぎたい。
「わかりました。でしたら、お相手の方が普段、どういったデザインのアクセサリーや服装をお好みになられるか教えていただけますでしょうか?」
それからいくつかアヤメに質問をされて、全部贈る相手はアヤメだと想定しながら返事をした。
そうしていくうちに、段々と今の状況を俯瞰できるようになってきた。
「ちなみにだけど、アヤ──店員さんなら、どれが欲しい?」
「え? 私ですか?」
「うん。参考までに教えてもらえたら助かるんだけど」
男性客を装う俺の質問に、ほんの少し悩む仕草を見せたアヤメは、ショーケースに並んでいた指輪のひとつを勧めてくれた。



