「アヤ……店員さん?」
「あ……す、すみません。プレゼントのお品ですね。クリスマスプレゼント用のジュエリーでよろしいでしょうか?」
アヤメが微笑む。
その笑顔を見たら、また情けないくらいに泣きたくなった。
「クリスマスジュエリー……っていうか、いや、うん…………。じゃあ、それでお願いします」
「でしたら、こちらにクリスマス限定ジュエリーのご用意がございますので、どうぞご覧ください」
とにかく話題を切らしちゃいけない。
ここはジュエリー店。今はジュエリーを買いに来た客を演じるのが自然だろう。
演じるのは仕事柄得意なほうだ。
だけど当のアヤメは……俺の正体にはまるで、気がついていないみたいだった。
もしかして、アヤメは俺のことなんてとっくの昔に忘れてる?
そう考えたら、苦しくなるほど寂しさを感じてしまう身勝手な自分がいる。
気づかなくって、当然なのに。
だってあれから、もう十五年という年月が過ぎた。
俺はその間に声変わりもしたし、アヤメとほとんど差のなかった身長も随分伸びて、クソガキから大人になった。



