愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 


「今日はプレゼントの品をお探しですか?」


 と、俺が呆然としながら考え込んでいたら、鈴を転がすような声が耳に届いた。

 ゆっくりと顔を上げれば、アヤメの透き通った黒目がちの目と目が合って、今度こそ心臓が止まりそうになった。

 ──ああ、やっぱりアヤメだ。

 絶対に、アヤメだ。

 改めてそれを実感したら涙が込み上げてきて、俺は思わず太腿の横で拳を強く握りしめていた。


「あ、あの……」

「……はい。大切な人へのプレゼントの品を買いに来ました」


 精一杯絞り出した声は、ほんの少し震えていた。

 それでも、偶然が繋いでくれたこの機会を逃すまいと、必死に彼女に繋がる糸を手繰り寄せた。

 真っ直ぐにアヤメに向かって歩き出した足も、まるで雲の上を歩いているように頼りなくて曖昧だ。