愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 


「ハァ……」


 暖房で温まった身体には、十二月の冷えた空気がやけにこたえる。

 コートのポケットに両手を入れて歩き出せば、街の明かりがいつもよりも騒がしく感じた。

 でも、今の俺にはこれくらいがちょうどいい。

 まわりに雑音を増やせば、彼女にまつわることを考える時間を減らせるから。


「あ……」


 それから、どれくらい歩いた頃だろうか。

 大通りから一本奥に入ったところで"ある店の看板"を見つけた俺は、思わずその場に足を止めた。


「ルーナって……」


 さっき、ケイちゃんが言ってたジュエリーブランドだ。

 ついでに言えば、今度俺がイメージモデルを務めるらしい仕事相手。

 さっきは興味がないだなんて思ってしまったけれど、仕事相手のことを何も知らないっていうのはやっぱり大分失礼だよな。

 って言っても、きっと後日、ケイちゃんが資料や企画書を見せてくれるんだろうけど。

 別に今、あえて知る必要はないんだろうけど、でも……。