「店員さん?」 ……ああ、ダメ。ダメだ。 私ったら今は仕事中なのに、また余計なことを思い出してる。 彼のことなんて──。 "ユウ"のことなんて思い出しても、ただ自分が苦しくなるだけなのに。 「も、申し訳ありません。やっぱり私が試着してもご参考には──」 ご参考には、ならないと思います。 私はそう言うと、たった今彼につけられた指輪を外そうとした。 けれど不意に伸びてきた手が、指輪がはめられたままの私の左手を優しく掴んで引き止めた。