愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 

「俺が指輪を贈りたい相手と、店員さんがよく似てるんだ。だから、店員さんにつけてもらえたらどんな感じかイメージしやすいかなと思うんだけど」

「は、はぁ……」


 だからって、私に試着させるっておかしいでしょう?

 もちろん私としては、お客様の力になれることは精一杯していきたい。

 でも、こう言ったら失礼だけど……なんだかこの人、少し変わっているのかも?


「で、では、少しだけ……」

「あ、待って。指輪は俺につけさせて」

「え?」

「一応、本番のシュミレーションみたいな。こういうのって、本番は緊張して上手くできなかったりするだろ?」


 そう言うと男性客は、唖然としている私の手を優しく掴んだ。

 いやいや、ちょっと待ってよ。

 この人、少しどころかかなり変わってるし、さすがに不安になってきた。

 今、店内にはこの男性客と私のふたりきりだ。

 この状況でもし、この人に何かされたら──なんて考えて込んでいるうちに、試着用の指輪が私の左手薬指に通された。

 
「……ああ、うん。よく似合ってる。ピッタリだ」


 次の瞬間、心臓がドクン!と大袈裟な音を立てて高鳴った。

『うん、よく似合ってる。ピッタリだ』

 同時に、遠い昔に"彼"に言われた言葉が脳裏を過ぎって胸が痛む。