「ちなみにだけど、アヤ──店員さんなら、どれが欲しい?」
「え? 私ですか?」
「うん。参考までに教えてもらえたら助かるんだけど」
うーん、そうきたか。
販売員をしていると、実は似たような質問をしてくる男性客は少なくない。
男性客からすれば、選択肢のひとつとして販売員である私の意見を仰ぎたいということが大きいのだろう。
だけど私の個人的な意見だと、やっぱり本人が悩んで選んだものを贈るのが一番だと思うんだ。
「やはり、今の時期でいうと人気なのはリングですね」
「……指輪か」
「はい。例えばですが、こちらの桜の花をイメージしたデザインのものは、幅広い年齢層の方にとても喜んでいただいているものになります」
言いながら私が勧めたのは、ピンクダイヤモンドが光る、華奢なデザインのリングだった。
クリスマスジュエリーの中では高級ラインにあたる商品だけれど、予算はいくらでも構わないということだったし、こちらの男性客にはオススメしても問題はないだろう。
「桜の花をイメージした……か」
「はい。ちなみにですが、お相手の方の指のサイズはわかりますでしょうか?」
私が尋ねれば、彼は一瞬考え込む仕草を見せたあと、何故かまた私の指へと静かに視線を滑らせた。
「そうだな……ちょうど、店員さんと同じくらいのサイズだと思う」
「でしたら、六号ですね。一度、こちらの商品をお手に取って見られますか?」
「ありがとう。じゃあ……試しに、店員さんがつけてくれない?」
「え……わ、私がですか?」
思いもよらないお願いに、今度こそ私は驚いて目を見張った。
これまで、商品選びの参考にと販売員である私の意見を聞くお客様は何人もいたけれど、商品を相手の代わりに試着してみろと言われたのは初めてだ。



