愛を語るには、一生かけても足りなくて。

 


「アヤ……店員さん?」

「あ……す、すみません。プレゼントのお品ですね。クリスマスプレゼント用のジュエリーでよろしいでしょうか?」


 いけない。一瞬、お花畑にトリップしてしまった。

 慌てて心の中で首を左右に振った私は、気を取り直して男性客へと目を向けた。


「クリスマスジュエリー……っていうか、いや、うん…………。じゃあ、それでお願いします」

「でしたら、こちらにクリスマス限定ジュエリーのご用意がございますので、どうぞご覧ください」


 説明しながら、ごく自然に男性客を案内する。

 そうすればショーケースの前に立った彼は、中を興味深そうに覗いた。


「気になるものがあれば仰ってください」


 先ほど彼が言った"大切な人"とは、彼の"恋人"だろうか。

 販売員としての私は、実はこの時間がとても好きだったりする。

 だって、お店にいらしたお客様が、商品を贈りたい相手のことを考え、真剣に悩んでいる姿を見ていると幸せのお裾分けをしてもらった気持ちになるから。