浅尾チーフが社長と戻って来て、すぐに内線で蓮に連絡を入れた。






「社長、料理長が新しいプランの件で相談したいと、今ここに来ます」





「わかった」





蓮とチーフと、同じ歳くらいのはずなのに、社長は威圧感があって、トップの風格がある。




蓮や浅尾チーフとは違う、話しにくそうな雰囲気を常に纏っていて、私は苦手。







そこへ、ちょうどやって来た蓮は、事務所奥の応接スペースで社長と話を始めた。







浅尾チーフが、私に説明を求めて、説明すると。






「あいつらしいな」





蓮と浅尾チーフは、高校の同級生らしい。



その事実を知った時は、世間って狭いと改めて、実感した。





あいつらしい、は蓮をよく知っているから出た言葉なんだろう。






「変更になると思いますか?」




「なるんじゃないか。社長は蓮の料理の腕をかってるからな」




「そうなんですか。変更になったらまた写真の撮影もありますし、資料作りが遅れますが構いませんか?」




「仕方ないだろ。今月末までには間に合うように作ってくれればいい。だが無理はするなよ?」





「はい」




「それと、あいつは料理バカで納得いくまでやってしまう。だから頼んだぞ」





あっ…はい、と返事はしたものの。
チーフはどう思って、頼んだぞ、って言ったんだろ?

やっぱり、付き合ってるんじゃないかって思ってたりするんだろうか。









確かに、蓮はモテそうな容姿を持っているくせに、料理以外は不器用な気がする。




鈴木の言う通り、人気があるわりには浮いた話は聞かないし。





だったら、私をどう思ってるか、なんてすら気にもしてないんじゃないかな。





考えても無駄だと、諦めた。