これを愛というのなら

翌日ーー。

蓮の実家に行く車の中で、暑くないのに私の手にはじんわり汗が滲んでいて。

何度も握ったり、開いたりしている私を見て。


「緊張してんのか?」


蓮は、汗が滲んでいている私の手を握ってくれて。

うん、するでしょ?って答えると。

大丈夫だ、と笑ってくれる。

やっぱり、これだけで不思議と緊張さえも消えていく。


昨日は、帰りの車の中で。

緊張したぁ~と言っていた蓮に私も同じ事、したなと思い出して。


「昨日と逆だね」


バックミラー越しに微笑むと、そうだな、って微笑み返してくれて。


「こういう事って、やっぱり緊張するもんなんだな。不安になるよな?許してくれなかったら…どうするとか、色々考えてしまうしな」


そうだね、と頷くと。


梓なら大丈夫だ、と。


「俺が惚れた女だ」


相変わらず、自信に満ちた蓮らしい言葉。

いつも不思議に思う、蓮のこの自信はどこから出てくるんだろうって。


でも、以外とこういう人ほど実は、弱い人なのかもしれない。

なかなか、そんな弱さを見せない蓮だけど……

私が蕁麻疹出た時、見せたアレが蓮の弱さなのかな?

だったら、私が蓮の側にいなきゃ。

きっと、私が蓮じゃないとダメなように。

蓮も、私じゃないとダメなんだって思いたい。



「もしね、昨日…私の親が許してくれなかったらどうしてた?」


なんとなく、聞いてみたくなって…聞いてみると。


「そりゃあ…許して貰えるまで、何度も行くだけだろ」


そう、あっさりと答えてくれた蓮は、


「駆け落ちとか、そんな事は…梓の大切にしてる仕事も全て奪うことになる。だから、したくない」


一瞬、頭を過ったけどな、と握っている手の力を強くした。


蓮の手の温もりからも伝わる優しさ。

私は、本当に蓮でよかった。

ちゃんと、私の大切にしているものも理解してくれている。


もう、こんな人は二度と現れない。

選べない。


だから、ありがとう、と言うと。

ほんのり顔を赤らめて、おう、と返してくれた。