これを愛というのなら

久しぶりに、一緒に電車で帰って来て。

二人でご飯を作って、食べて。

片付けが終わったあと。

キッチンを掃除していた私を、


梓!ちょっと!と、ソファーに座っていた蓮に呼ばれて。

隣に座ると。


「誕生日、おめでとう。クリスマスと一緒になって悪い…」


蓮が、私が欲しかったイタリアのブランドの、腕時計をくれた。

ありがとう、と笑った私に。


「異性から異性へ、時計を贈る意味わかるだろ?」


仕事柄、そんな意味は百も承知だけど。

あえて、忘れた、と答えると。


「同じ瞬間(とき)を一緒に刻んで行こう」


真っ直ぐに瞳を合わせて言ってくれた、この言葉を。

蓮から、言われたかった。


「言ってくれて、ありがとう」


蓮に抱き付くと、わざと言わせただろ?って。

脇腹を擽られ、やめてよっ戯れている、この瞬間さえも。

幸せ、楽しい。






「私が、欲しかったのよくわかったね?」


私の肩を抱いて、隣に座っている蓮に。

視線はテレビに向けたまま訊くと。


「前に買い物行った時…それ見て、素敵って言ってただろ?」


確かに言った記憶はあるけれど、

こんな些細なことを、覚えていてくれたの?

嬉しくて、嬉しくて。


「嬉しい。ずっと使う!」


って、口に出していた私を。


可愛すぎだろ、今の笑顔。

呟くように言った蓮は、抱いていた腕に力を込めて。


「俺らしくないって…梓は言うんだろうけど…」


前置きされたあと、

テーブルに箱ごと置いてあった腕時計に、手を伸ばして取ると。

私にそれを渡して。


「文字盤の反対側見てみろ。特別に彫ってもらった」


言われるがまま、箱から出して見ると。


" Insieme nello stesso momento "

そう彫ってあって、当たり前だけどわからない私は、蓮を見上げると。


「Insieme nello stesso momento。
イタリア語で、同じ瞬間(とき)を共に。梓とは手を繋いで、ずっと同じ瞬間を歩いて行きたいと思ってる」


そんな極上の言葉をくれて。

泣き虫らしい、私の瞳からは涙が溢れ出す。


上から私を見下ろして、溢れる涙を指で掬い上げてくれる。


まさか、蓮の口から、こんなにも嬉しい言葉が聞けるなんて。

今まで、たくさんの嬉しい言葉をくれたけれど……

今日の言葉が一番、私の心を満たしてくれた。


崩壊した涙腺は、止まることを知らずに。

どんどん雫を作っては、頬を濡れさせる。


それを、蓮の唇が瞳に触れて、掬い上げてくれる。

何度も、何度も。


そして、、、


「私も…蓮と…」


同じ言葉を言いかけると、

知ってる。言わなくても、と微笑んで。

親指で私の唇をなぞると、優しく甘いキスをくれた。



そのあと、プロポーズじゃねぇからな、と。


「昨日も言ったけど…それは、そのうちな」


頭を撫でながら、言ってくれた。