これを愛というのなら

夜食を作ってから、

お風呂に入って、テーブルに置きっぱなしになっていた、

フランス語とイタリア語の蓮の料理本を、パラパラとめくって見る。

おそらく、レシピ的な事が書かれているんだろうけど……

私には当たり前だけど、さっぱりわからない。

本当にすごいなぁ…って思いながら、片付けている所へーーー。



ただいま、と蓮が帰って来たのがわかって。

玄関へ向かって、おかえり、と靴を脱いだ蓮に飛び付くと、

危ねぇよ!と片腕で、私の身体を支えてくれて。


「今日は、珍しい出迎えだな」


見上げている私の額にキスをして、そんな事を言う。


「だって、改めて。蓮はいい男だなって思ったから、抱き付きたくなった!」


抱き止めてくれたままの蓮の顔は、少しだけ赤く染まって。

なんだよ、急に。って微笑んで。


腕を離して、頭を撫でてくれてから鞄を私に渡して。


ダウンコートを脱ぎながら、中に入って行く後ろ姿を見つめながら。

支えてあげたいな、と。

曖昧に思ってた想いが、強く固まった。




蓮が夜食を食べてくれて、お風呂に入ってから。

疲れた!と言いながら、ベッドに横になった、その隣に私も横になって。

お疲れさま、と頭を撫でてから。

蓮の伸ばしていた腕に頭を乗せる。


そんな私を、抱き締めてくれると。

焦ったよ、と呟いて。


「心臓に悪いこと、すんなよ」


そう言って、私の髪をそっと梳かすように撫でるから。


「蓮が、島田さんにキスされるって思ったら…見てられなかったから…」


少し身体を離して、見上げると。

フッと笑った、蓮は。


「避けるつもりだったけど」


そして、何かを思い出したように笑い出すんだから。

なに?っと蓮の脇腹を擽ると、やめろって!と身を捩って笑う蓮は。


「…思い出し笑いしてたんだよ…あっ…だから…もう止めろ…うっ…」


擽る私の手を取ってから、自分の背中に回して。

楽しかったのに…蓮に止めさせられた事が、悔しくて…

頬を膨らませる私の頬を、人差し指でツンってしてから。


「普通なら、私の男に何しようとしてんの、とかって言うだろ?でも梓は、仕事の邪魔するなって…」


と、笑いながら言うから。


鈴木に見られてて、鈴木にも言われた事を伝えると。

だろ?

「ちょっとズレてんなって思ってな。嬉しかったけど」


ありがとな、と頭を撫でてくれた。


それは、それでもう良しとして聞かなきゃいけない、ことがある。


「島田さんに何を言ってたの?」


蓮の身体を仰向けにしようとすると、すんなり仰向けになってくれた蓮の、

上に跨がって、そう訊ねると。


あぁ…あれな。と、私の腰に腕を回して。



「『俺にどうして欲しいだ?キスしたら諦めてくれんのか?梓じゃないと、俺は満足しないけど、諦めてくれるなら一回だけしてやるよ。どうする?』そう、言ったんだよ」


右手で、私の腰を撫でながら答えた蓮が言ってたらしい事を嬉しいと思っていいの?

いや、決して嬉しいわけでもなくて複雑なんだけど……


「もし、キスしてって言われたらしてたんでしょ?」


そう!こういう事なんだよ!


「まさか、梓が見てるって思わないからしてたな」


なんて悪びれもなく言った蓮のお腹を思いっきり叩くと、

うっ……イテッ!と声を上げたあと。


してねぇだろ、実際。


だから!そういうことじゃない!


「蓮の唇は…もう私だけのでしょ?だから…蓮から理由はどうあれ他の子にしないでよ…」


へぇ~、と言って口角を上げて、イタズラっぽく笑った蓮は、


たまには可愛いことも言うじゃねぇか。と、


起き上がって向かい合う態勢にすると、

首の後ろに手を置いて、


「俺の唇も全て、梓だけのものだよ」


耳元で、囁いて。

悪かった、と瞳を見つめて言ったあと、


甘いキスをくれて。

そのキスは、私が大好きな楽しむようなキスに変わっていた。





これで、あの二人の事は終わるといいんだけど。