これを愛というのなら

そして、


「島田さん!私の大切な人の仕事の邪魔しないでくれる?」


自分でも驚くくらい冷静な、普段より低いトーンの声が出ていた。


まさかの私の登場に、驚いてるのは島田さんだけじゃない。

蓮も驚いた顔をしていて、


「ずっと見てたのか?」


そう言ったけれど、今はそんな事はどうでもいい。


「島田さん、蓮はね…仕事に対して、一切妥協しないプライドを持っていて、何よりも大切にしてるの!それを邪魔したり、奪う人は相手が誰であっても…私が許さない!」


一瞬、蓮を見た島田さんは。

邪魔なんかしてません、と言うから。

大きな溜め息が出た。


「今、島田さんが。ここに蓮を連れ出してる事は、邪魔してる事にならないの?今日からのクリスマスディナーのために、蓮がどれだけ時間と労力を割いてきたかわかる?」


素直に、わかりません、と答えた島田さんの視線が下に向く。

だから、目を逸らさないで、と言うと私に視線を向けた。


「繁忙期明けで疲れてるはずなのに…寝る間も惜しんで、朝早くから夜遅くまで厨房に立って。クリスマスディナーだけじゃない。週末の披露宴の料理の仕込みもして、週末には披露宴の料理を作って、厨房を回して、レストランの面倒も見て。今日からのためにしてきたのよ!」


ここまで、私が言い終えると。

黙って聞いてくれていた蓮が、


梓、もういい。ありがとな、と私の頭にポンっと手を置いた。


それを見ていた、島田さんは下唇を噛んで。


「ただ、私は料理長が好きで力付くでも振り向いてほしかっただけ」


頭を下げると、すいませんでした、と謝って。

蓮にも、すいませんでした、と謝って。

従業員入り口の方へ走って行った。



パタンっと勢いよく、ドアが閉まってから、

蓮は私を抱き締めて。


「いい女だよ、梓は」


耳元にわざと、唇を寄せて囁くようにいって、髪に優しいキスをくれた。


ありがとう、と蓮の背中を軽く叩いて、

早く戻って、と言うと。


「そうだな。気をつけて帰れよ!俺はたぶん終電で帰るから」


って、額にキスをくれた。