「これを飲んだら戻るよ」




「ああ。それよりさ、新しいプランの料理の内容はどうなってた?」




「この前の会議で決まった内容だよ」





スーツのポケットに入れて持って来ていた1枚を、蓮に差し出した。





「やっぱりか…」




「どうしたの?」




眉間に皺を寄せながら、困ったような表情をみせた。




「メインのソースに使いたいワインがな、在庫切れで向こうから取り寄せても3ヶ月後にしか…入荷しないらしいんだ。間に合わない…」





確かに3ヶ月後じゃ、プラン適用日には間に合わない。





料理のことはよくわからない。



だけど、料理人からすれば替えワインより在庫切れワインで作る、ソースの方が美味しいってのわかってるんだろう。



安易に、替えワインの話は出来ない。




普段は優しいこの男も、料理のことになると厳しくなる。



厨房の人達は、料理長は鬼ってよく言っているのを、耳にする。







「今からでも変更OKか、相談してみたら?社長に」




「そうだな、でも社長は今日は来ないだろ?」




「来てるよ。チーフが呼ばれてたから、今頃は2階の奥に居ると思う」




「なら、連絡くれ。戻って来たら」



「わかった」




ごめんな、となぜか私に謝り、キョトンとする私に。




「せっかく作り出してた資料、一からやり直しになっちまうかも…しれねぇ…」




なんて、本当に申し訳なさそうに言うんだから……





「気にしないでよ、まだレイアウト考えてたくらいだから」






本当はそんなのは終わっていて、もう打ち込むだけの段階だったけれど。




あんな顔をされたら、そうとしか言えないよ。