これを愛というのなら

そんな存在の利香が、平日の昼休み終わりくらいから、元気がなくて。



隣のデスクに座る利香に、何かあった?、と小声で聞くと。


うん、ちょっとね。


「あとで、時間あったら聞いてくれる?」


小声で言った利香の表情は、やっぱり元気がない。




サロンでの打ち合わせも終わって、少しだけ時間を作れたこともあって。


誰もいない2階の奥で、話を聞くと。



「この前の神前の新婦さんが今日、挨拶に来てくれて。サロンの前で、お見送りした後に、駐車場の自販機に行ったらね」


車の陰に人影があって、こっそり覗いてみたら。


「陽介さんと、その新婦さんだったんだよね」


利香の顔はどんどん、曇っていくのがわかる。

聞かなくても、きっと利香が聞きたくない話をしていたんだと、想像がつく。


「別にね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど。なんか足がすくんじゃって動けなくて。聞きたくなくても聞こえちゃって…」


私はまだ陽介が好きよって。


「新婦さんが言ってたの」






好きな子がいる。だから、お前とは。

2番目でもいいの。私の不倫でもいいの、陽介には迷惑かけないから。




なんて会話をしていたんだとか。


その後、考えておいて、と言った新婦さんが、その場を離れた時に。

チーフが大きな溜め息をついたらしい。



「チーフに…聞けないよね?」


私なら聞けないから、利香にもそう聞くと。


うん、と瞳に涙を溜めて頷いた。


「蓮に聞いてみるよ」


と、言うと。


ありがとう、と瞳に溜まった涙を指ですくって。

笑顔をみせた。


「利香。かなり辛いだろうけど今は、その笑顔だよ!」


肩を叩くと、うん、と。


「前に言ってくれたよね?何かあったら私がついてるって。私も同じ気持ちだから」


利香の頭を撫でてると、ありがとう、と微笑んでくれた。



きっと、大丈夫だよね?

利香とチーフなら。

だって、チーフは言ってた。

利香は俺が幸せにするって。