これを愛というのなら

「……身体……いてぇ……」


目覚まし時計を片腕を伸ばして止めた蓮が呟いて、私の額にキスをする。


そのキスでゆっくりと瞼を開けると、裸の蓮の胸が視界を占めて、その胸に頬を擦り寄せる。


「んー……私も痛い……蓮が……激しいから……」


「俺のせいかよ…?もっともっとって…煽ったのは梓だろ…?」


「……だって……気持ち良くて……」


「…俺も…気持ち良かった…ってことはお互い様だな…」


少し身体を離した蓮は、私の顎をクイッと上げると唇を重ねた。

おはよ、と。

だから私も、おはよう、とキスを返す。


「……さてっ…起きないとな……」


「そうだね……」


寝転がったまま背伸びをした私の身体を、蓮は労るように起こしながら自分も起き上がる。

もう一度キスをして、ベッドの下に落ちている下着と服を身に付けて。

蓮はキッチンへ、私は洗面所に向かう。


朝ご飯は毎朝、蓮が作ってくれて。

私はその間に昨晩のうちに、蓮が予約しておいてくれた、大量の洗濯物を干して。

子供たちを起こしに行って、3人が目を擦りながら起きて来たタイミングで、朝ご飯が出来ている。


おはよ……と、3人は毎朝、蓮と並んで蹲むと抱き付いてきてくれて、おはよう。

そして、5人で同時にいただきますをして、朝ご飯を食べる。

食べ終えると、ごちそうさま、と食器をそれぞれがキッチンへ運んで。

蓮が片付けをしてくれている間に、3人を洗面所へ連れて行き、身支度を整えさせる。

着替えを済ませると、おませな愛と幸は。


「今日は、編み込みがいい!」


「今日は、おだんごがいい!」


お気に入りのヘアゴムを持って、注文をしてくるから、それに答えて髪を結うと。

お決まりのように、かわいい?と蓮に見せに行く。


「可愛いよ!」


パパに頭をポンポンされて、満足そうに笑う愛と幸を誠は、微笑ましく見ながら私に寝癖を直される。


「よしっ!行ってらっしゃい!」


「気をつけてね!行ってらっしゃい!」


玄関の外まで出て、並んで手を繋いで登校する3人が、見えなくなるまで見送る。


中に入ってから、休みの日も休みじゃない日も身支度を一緒にする。

前より短くなった蓮の前髪だけど、掻き上げる癖はそのままで。

変わらず、その仕草に毎朝ときめいてしまう。


「ん?なんだよ?」


「……別に……なんでも……」


「……ふーん…俺に見惚れてた?」


バレてる……って、わかるよね。


ずっと、私の色んな表情を見てきてるんだから。


「……わかってて訊いてる?」


「そうだけど…」


横から柔らかく抱き締められて、見惚れてたよ、と見上げて呟いた唇に唇が重なる。

音を立てて離れた唇。

その顔を見つめて、40代半ばになっても蓮のカッコ良さは反則だ。

とても40代半ばには見えないし、髪に白髪がチラホラ出てきていても、顔に皺のひとつもない。

小学校のママからも、カッコいいよね、
素敵よね、とチヤホヤされるはずだ。


「小学校のママさん達にね、カッコいいとか言われるんだよね」


身支度をして、リビングに向かいながら蓮の背中に話しかけると、

カッコよくねぇよ、と。

この返しも相変わらずだ。

蓮は美意識が高いわけじゃないし、むしろ美を意識するっていう概念はない。

自分の容姿をカッコいいなんて思っていない。

利香と鈴木に、カッコいいって自覚持って、とよく言われてたよね。


「梓だって大概、若いだろ?」


「褒めてる?」


「年を取っても可愛いってことだ!」


一瞬で顔が熱を帯びる。

相変わらず、さらっと言うんだから……私が赤くなるのをわかってて言ってるから、本当にずるい。