これを愛というのなら

インターホンが、小野くんが来た事を知らせてくれる。


「お待たせ!」


小野くんは、松田くんと蓮を交互に見て、二人の間に座った。

立ち位置みたいなのが、暗黙の了解のようにあるらしい3人。


小野くんが、ビールある?と言うのでビールをグラスに入れて渡すと、一口飲んでから。


「さてっ!本題だ。裕司が彼女を味方に着けてくれたおかげで、いい策を思い付いた!彼女には、“KOBAYASHI”と契約して、ショッピングモール建設を進めている会社のリストを入手してもらいたい。お願いできる?」


「わかった。だけど、何でそのリストが必要なんだ?」


「おそらく、この商店街が建設予定地に決まった時点で“KOBAYASHI”は、商店街は承諾済みで撤退の準備を進めてると、説明してるはず。反対されれば、それだけ着工が延びて会社の負担もリスクも大きいから契約はしないと思う」


「なるほどな!だから、その会社へ行って反対してるって話すんだな?」


「そういうこと!この役目は、蓮にお願いしたい。頭の回転が早い蓮は、交渉事はお手の物だろ?」


「任せろ!」


「で、俺は友恵に頼んでリストを手に入れたらいいんだな?」


「うん、ただし彼女から手渡しとなると彼女の身が危険かもしれない。だから、USBにコピーした物を郵送してもらって」


小野くんの導く解決策には脱帽する。

正当なやり方ではないけれど、こちらが有利に傾くように的確で、松田くんの彼女の事まで考えている。



「わかった。とりあえずは友恵とはしばらく会わない方がいいな……」


「そうだな。だけど、入手して貰えるようにお願いする時はバレないように細心の注意を計って、直接お願いしてくれ。通信の類いを使うと足がつくから」


「了解した!」


「そして俺はもしも、この策が失敗した時の策を考える。あと……蓮に忠告!」


「なんだ?」


「契約している会社に行く時は、梓ちゃんは連れて行かない方がいい。それこそ梓ちゃんが危険な目に合う可能性が高い。店に居てもらう方が安全だよ?」


「わかったよ。梓、待ってられるな?」


力強く頷いた私の頭を蓮が優しく撫でてくれる。


「それから、各々の大切な人は絶対に一人で行動させないこと。梓ちゃんもいい?買い物も必ず、おばさんか唯さんと一緒だよ?」


「うん、わかった」


小野くんが、いい子、と頭をポンポンするとお決まりの蓮の舌打ち。


「最後に蓮。明後日にでも急だけど……商店街の皆をはせがわに集めて。予定通り、俺が話をする。署名の用紙は今日、奈々枝が作ってくれたから用意出来てる」


「了解!」



どうか……皆が無事で、上手くいきますように。



私は終始、小野くんをポカーンっと見ていて。

二人が帰った後、ベッドで一息ついた時に蓮に突っ込まれた。