これを愛というのなら

茜色の夕焼けが空を染める中ーーー。

蓮とテラスでじゃれ合っていると、インターホンが鳴った。


「もしかしてまた、アイツか?」


「たぶんね」


蓮は私の唇に触れるだけのキスをして、中に入ってインターホンに応じる。


「鍵開けるから入って来いよ」


「松田くん?」


「そうそう。ご飯温めといて。皆で食おうぜ」


頷いた私は、キッチンへ。



「友恵とくっついたぞ。で、友恵に何をしてもらえばいい?」


松田くんも一緒に、ご飯を食べた後。

ソファーに移動して、お酒を飲んでいる。


「よかったな。だけど、何をしてもらえばいいかって聞くのは俺じゃねぇよ。それを考える役目は大輔だ!」


「そうかっ!大輔は頭脳派だからな」


松田くんが、そう言った直後に蓮のスマホが音を出す。

画面を見た蓮は、噂をすればだな。


「"今から行く"ってLINEだ」


「タイミング良すぎだろ?」


「連絡入れといたんだよ。飯を食ってる時に。お前が来たってことは、いい報告だと思ったから」


溜め息を吐いた松田くんは、蓮の勘の良さと頭の回転力には完敗だ。


「口喧嘩で勝てた試しがない。ある意味、一番敵に回したくない奴だよ」


わかるよ!松田くん!

私も喧嘩になると蓮には口じゃ勝てない。


「それを知ってて、敵に回した奴がいるけどな」


蓮が口角を上げて、ニヤリと笑う。

友恵のお姉ちゃんか?


「あぁ……留学先でばったり会って、留学してる間に付き合ってた。だから良くも悪くも俺を知ってるのにな」


「……なるほどな。それより今日、お姉ちゃんに会ってる事バレたら怖いって言ってた…守りたいんだ。いいよな?」


姉妹なのに……怖い?

何か妙だ、と思うと口に出していた。

なんで怖いんだろ?と。


「友恵は、お父さんの愛人との子供らしくてな。お姉ちゃんは本妻の子供で、お母さんが亡くなったから友恵は、小林家に引き取られたらしいぞ。だから、逆らえないんだって……」


何も言葉が出なくなった……

そんなの人として最低だ。

逆らえないのをわかっていて、やりたくないことをやらせるなんて。

だから……


「真っ直ぐな松田くんを好きになったのかもしれないよ」


キョトンとする松田くんに、私なりの解釈を。


「妹さんはね、きっと今まで肩身の狭い思いで生きてきたんだと思うの。だけど、行く宛てもなくて逃げられなかった。そんな妹さんが騙すって名目で出会った人が、松田くんだった。この人なら私を、この息苦しい家から連れ出してくれるって思ったんじゃないかな」


松田くんは、ありがとう、と。

私の頭を撫でて笑ってくれる。

相変わらず、それに対して舌打ちした蓮は、、、


「たぶん梓の言う通りだな。しっかり守ってやれ!」


「おう!連れ出してやるよ、俺が。息苦しい家から」