蓮と私の左手薬指に、誓いの証。

名前の通り、見るたびに水鏡のように光って見えて。

同じ位置に手を置いていると、その一筋の光が繋がっているよう。


まだ残暑が残る、秋の足音が近づいて来ている今日もーーー、

厨房の作業台に、まな板を並べて食材を切っていると、指輪がそんな風に見えて顔が綻ぶ。

蓮は私をちらちら見ながら、口の動きが止まると朝御飯のフレンチトーストを、あ~んは?と言って、口を開けた私の口に入れてくれている、、、


そこへーーーー。


「おっはよー!!」


爽やかな明るい声に、勝手口に視線を蓮と同時に向けると、配達に来た小野くんが立っていて。


「おはよ……ってお前な…インターホン鳴らせって毎回、言わせんな!」


「まあまあ、いいじゃん」


いつもの場所に置いて、いつものようにカウンター席に座って。

梓ちゃん!コーヒーね。

蓮は舌打ちをして、配達してくれた物を冷蔵庫に閉まってから。


「聞いたか?裕司の彼女のこと」


「この前、刺身を買いに来たから聞いたよ。マッチングアプリで知り合ったんだろ?」


「あぁ。デートも何回かしたらしいんだけどな…かなり嵌まってる様子で心配なんだよな…」


この間も配達に来た時に、デート話をしていた松田くんが帰った後に心配してた蓮。

どんどん嵌まってないかって。

私から見ても、そんな様子が伝わってくる。


「俺も、心配だなぁって思ってた。裕司って純粋過ぎるし、真面目だからな」


「それがさ、仇にならなきゃいいんだけどな……」


「そうだよな。でも今は聞く耳を持たないよ。俺の忠告にも、はいはいって嘲笑われた」


大輔にもか……と苦笑いする蓮に、見守ってあげるしかないよ。


「梓ちゃんの言う通りだよ」


すると、そこでーーーー。


勝手口のインターホンが鳴って、ドアを開けたのは松田くんだった。


「あれ?今日、配達あった?」


松田くんに訊くと、ないんだけど、と。

用事があって、とカウンター席に回って。


「大輔もいたんだな」


隣に腰を降ろして、コーヒーを出した私に、ありがとう。


「あのな…蓮。明後日、彼女とご飯食べに来ていいか?」


「もちろんいいけど。用事ってそれか?」


「だってよ…中休みまで、お前は電話繋がらないだろ?店にかけるのもって思って、店を開ける前に来た方が早いだろ」


「店にかけてくれればよかったんだよ」


いいじゃねぇか!と。

コーヒーを飲む松田くんに、明後日。


「俺も来ていいか?」


小野くんが、松田くんに訊くと。

いいぞ。紹介するよ!