これを愛というのなら

ドアを開けてすぐ左手には、扉が2つ。



トイレとバスルームだろう、と予想がつく。





正面の扉を潜ると、ワンルームの広い空間。




右手奥にあるキッチンの方には大きな窓があって、ベランダに続いている。







「適当に座れよ」




突っ立ったままの私は、ソファーに腰を下ろした。




キッチンに向かった蓮は、飲むか?とワインボトルを私に見せた。




今、お酒を飲んだらすぐに寝てしまいそうだって思ったけれど、変な意識もせずに済むような気がして、コクりと頷いた。






蓮が出してくれたワインを飲みながら、つまみにと皿に並べられたチーズを口にする。






「梓…何食いたいか考えとけって言っただろ?決まったか?」




「蓮の作る料理なら何でもいいよ」




「何でもいいってのが一番困る」




「だって何でもいいんだもん」





本当に何でも美味しいから。





「わかったよ。明日、作ってやる」





頭を撫でながら微笑むから、うん、と頷いて。




自然と笑顔になる。





だけど、いつもなら笑顔で返してくれるはずの蓮が、視線を逸らした。





「蓮?」




腕に触れて、顔を覗き込むとワイングラスを持っていない反対の手で私を、かき抱いた。





何が起こったのか、一瞬わからなかった。




押し返そうとしても敵わないくらいの、強い力。





ワイングラスをテーブルに置いた音がしたと同時に、その腕も背中に回された。