校庭を走りながら、靴を履き替えながら、廊下を走りながら、今私は壱に、近づいているのか遠ざかっているのか分からない。
こんな不安ははじめてだから。
壱との距離が分からない、それは私にとって、自分の立ち位置さえ分からないってことだ。
でも泣かない。
奥歯を食いしばって耐える。
昨夜、ベッドで泣きながら眠って気づいたことがある。
私は今まで全然、1人きりで泣いたことがない。
18にもなってそんなことって本当にあるだろうか、思い返してみたけど本当にないのだ。
それはたぶん、いつも隣に壱がいたから。
壱が私を、守ってきたから。
一線を越えない一番優しい場所で、私を。
一度も立ち止まらずに走って走って走って走って、1階の3年A組のドアを震える手で思いきり開けたら。
夕暮れに半分侵された教室に、壱がいた。
他には誰もいない。
壱だけがいた。
窓から差しこむ鈍い光を背負って。
それはなぜだかとても懐かしい光景だった。


