私はなんで、こんな町中を全力疾走してるんだろう。

異世界モノの主人公みたいに必死に。


でも目に映るのは、知ってる道、知ってる建物、知ってる信号、当たり前に全然ここは現実だ。

現実の私には、厳かな力もなければ厳かな敵もいない、当たり前に全然。


額に少し、汗がにじむ。



たどりついた学校はすでに1日の仕事を終えたらしく、すでに閑散とした校庭に残るわずかな生徒を送りだしている。


はあはあ校門の前で身体をくの字に折り曲げて呼吸を整えている私に、校門を抜けていくまばらな生徒たちの無遠慮な視線が投げられるけど、そんなこと気にする余裕もないくらいに私は息絶え絶えだ。



そもそも…私は…壱と違って足も遅いのだ…。

ちくしょう足がガクガクするよ。


そんな私を嘲笑うように6月の生ぬるい風がひと吹きするから、それを振り払うように上半身を上げたら。



目の前に驚いた顔をした野次馬ズがいた。