「ていうか光太郎くんの話まじなんだ」
やっぱりだ。
「仁乃ちゃん、壱くんの命なんでしょ?ウケる」
笑ってろ。
心のなかでそう呟いて実際にはだんまりきめこみ、手を動かしていると。
賞味期限の新しい瓶が一番前に陳列されていて舌打ち。
誰かが手を抜くとこうなる。
埃っぽい棚に腕をつっこんで奥にある瓶を取ったら、万里加さんがカウンターから言った。
「ねー壱くんあたし結構胸あるよ」
「困ってないんで」
「困るとか困んないとかじゃなくない?」
意味分かんね。
「もらえるもんはもらっといたらよくない?」
この人は俺になにを差しだすつもりなんだろう。
つーかとんだ尻軽だ。
爪の垢煎じて仁乃にちょっとは飲ませてやりたいくらいだ。
嘘だけど、そんなもん飲ませないけど。
「は、待って大丈夫?ちゃんとそういう欲はあるよね?」
今度はカウンターに乗りだして聞いてくる万里加さんに舌打ち。
あるから困ってんだろ、毎日毎日毎日毎日、仁乃の隣で。


