ちらり、万里加さんを見たら、困ったような顔で私を見て笑って。
「万里加パイセン、女の子のはじめては相手がある程度上手じゃないと、涙出るほど痛いもんだよとかいらないこと言いまして」
私は缶を口元に運ぼうとしていた手を止めて、瞳孔を開いた。
「壱くんそんなこと知ってるわって顔してたけど、仁乃ちゃん痛いのかわいそうだよねって、言ってみたら、あたしの誘惑なんだったのってくらい一瞬で釣れた」
万里加さんはお行儀悪く缶を咥えて、自由な両手をやれやれと広げる。
「で、あたしの部屋であたしのベッドで、いざって時に壱くんのあれですわ」
――『仁乃は脳みそクソガキだけど、味覚だけは生意気で、コーヒーは絶対ブラックなんです』
――『かわいいでしょ』
「バカじゃないの」
気づいたら、呟いていた。
「バカなんだよたぶん」
万里加さんも平然と言う。


