「壱くんが高1で、あたしが高3の頃、か。バイトで会うようになった壱くんのこと、かわいいなーいいなーって思ってたのね。壱くんあんま喋んないから、押してみたらいけたりすんのかな、とかよからぬことちょっと考えてたりね、あはははごめんね」
私は頷く。
「でも光太郎くんたちに、壱は無理っすよ、幼なじみに命かけちゃってるんでって言われて」
下唇を噛む。
――『仁乃命だから』
幼い頃から、何度聞いた台詞だったろう。
「でもまだ16そこらのガキじゃん?どうせ大した経験もないし、ほかの女知らないからそんなこと言えるんだよって思って、誘惑してみたけどこれが靡かない靡かない」
万里加さんは左手をはらはらと振って、少し黒く笑う。
「かといって仁乃ちゃんのことモノにしてるわけでもないらしいから、なーんか悔しくて」
それから万里加さんが少し黙るから、私はようやく缶のプルタブを上げた。


