「お店からドリンク持ってきたらよかったよねー、ごめん。あたしって本当こういう時気が利かないだめな奴なんだよね」
意外にも自虐気味に言う万里加さんに、首を横に振ってお礼を言い、差しだされた缶を受けとる。
真っ黒の小さなそれには、『BLACK』と大きく書かれていて、隣に座った万里加さんの持っている缶を見たら、それは甘そうなカフェオレで。
「…で?あたしは今のうちに遺書でも書いといたほうがいいのかな?」
プルタブを上げた万里加さんが、苦笑いして言った。
「こうなった場合は仁乃に殺される可能性ありますって、壱くんにあらかじめ言われてたんだよ」
こうなった場合っていうのは。
壱と万里加さんのアレコレを、私が知った場合、ということで。
本当なんだな、壱が言ったこと。
壱が嘘なんかつかないことくらい分かっていたのに、まだ一縷の望みを捨てていなかった自分を心底嫌いだと思う。


