「あれ、仁乃ちゃん学校は?」
ショートヘアと小ぶりなピアスと、少し丸くなった猫目が相変わらず眩しい。
――『あたし壱くんとは全然怪しい関係じゃないよ?』
はじめて会った日に万里加さんが笑って私に言ったことを思い出して、カウンター越しにその胸倉を掴みそうになってしまう。
まじでやってくれましたよね、私の大事な大事な幼なじみよくもたぶらかしてくれましたよね、こちとらまんまと世紀末ですよ。
…じゃないだろ。
この期に及んで責任転嫁しようとする自分を心のなかで思いきりビンタして、前を向く。
思い知るんだ、身の程を。
思い知ってるふりしてきた身の程を、ちゃんと思い知るんだ。
それで、ちゃんと傷つけ。
ちゃんと傷つけ、仁乃。
息を吸う。
息を吐く。
胸が痛い。
これから言う言葉が、私を傷つけることを知っているから。


