もうママもパパもいない静かなリビングでごくごく水を飲んでから、熱いシャワーをゆっくり浴びる。
真っ赤に充血した目に、熱いお湯が染みることをはじめて知った。
鏡に映った鎖骨の小さな痕は、昨日壱が私に刻んだもの。
その鮮やかな赤は、いつか見た夢のなか、壱が私に差しだした花を思い出させた。
念入りに髪を乾かして、ブローして、こんな顔だけどな、と思いながらもいつもどおり少しだけ髪先を巻く。
部屋に戻って、クローゼットからちょっと綺麗目なブラウスやひざ丈スカートなんかを手にとってみだけど、どうあがいたって結局私はただの高校生だから、制服を着る。
だっさいな。
だっさいけど。
うん、行くか。
なにかひとつでも鋭利なものが入っていないか念入りに鞄のなかをまさぐって、自分が丸腰であることを確認してから、私は家を出た。


