結局最後まで話すこともできなかったことが悔しくて涙目で壱を見上げると、壱は乾いた瞳で私を見下ろして。
「仁乃、最後の実験しようか」
文脈なんてなんのその、バスタオルを部屋の隅にぽいと投げて言った。
え、と声に出すより早く両脇腹を壱に掴まれたと思ったら、そのままふわりと身体が浮いてすぐにベッドの上に着地した。
か、簡単にだっこされてしまった…。
「壱、これは…」
壱が私に覆いかぶさっっている、体勢は完全にあの夜と同じ。
「ベッドに乗らなきゃセーフとか思ったのか知らないけど、のこのこ部屋までついてきて俺が風呂あがるの大人しく待ってる時点でアウトな」
壱にしてはものすごい長台詞だ、なんてぼんやり考えている私の頬に、ぽつり、壱の髪先から雫が落ちて、ようやく正気を取り戻す。
ここから脱出しなければ。
そう思ったのに、なぜか今選んだ言葉は、
「…壱、光太郎くんと、なんかあったの?」
さっき聞かなくちゃと思ってたことで。


