渡り廊下の裏までよろよろ歩き、壁にもたれてずるずると座りこむ。
引く手数多の、壱。
壱好きの女はこの世界にごまんといる。
私は昔から壱の、幼なじみなんて名目のただの腰ぎんちゃく。
腰ぎんちゃくには腰ぎんちゃくなりの、覚悟があったのに。
――『実験してみよっか、仁乃』
――『じっけん?』
――『そう実験。俺と仁乃が、本当にただの幼なじみで、恋愛対象にならないのかどうか』
壱が、あんなこと言うから。
4月1日の夜のことをぼんやり思い出していた時、私の前を通り過ぎようとする光太郎くんに気づいた。
私に気づいていない光太郎くんは、手にバスケボールと紙パックの牛乳とを持っているから、すぐそこの自販機から教室まで戻るところなんだろう。
「光太郎くん、ちょっといいかな」
座りこんだまま声をかけたら、光太郎くんは肩をびくつかせ飛び上がって私を見た。


