「待っててくんないの」
壱が、まっすぐ私を見据えて言う。
心臓がくくく、と痛くなって、痛くて痛くてたまらないから目をそらしたいのに、最近の私はそれすらできない。
やだよ、おなかすいたもん。
笑ってそう言うつもりだったのに、口をついたのは。
「…待っててもいいの?」
そんな、縋るような言葉で。
壱が目を丸くするので、それにはっとしてようやく目をそらしたら、少し離れたところにいたはずの壱がいつのまにか目の前にいて、気づいた時には、顎を右手でやんわりと掴みにされていた。
染みひとつないなめらかな壱の頬が、か細く通った鼻筋が、黒髪の下の大きな瞳がすぐ近くにあって。
この距離から壱が、どんなふうにキスするかを、私はもう知ってしまっている。
失敗した、失敗した、失敗した。
待っててもいいの?なんて、言うつもりなかったのに。


