壱の右手は私の手を握っていて、壱の左手は私の後頭部を抱えているから、逃げようにも逃げられない。
立ったままの壱と私の身長差はきっと20cmくらいあって、その差を埋めるために壱が少し背を屈めているのが分かった。
掴まれていないほうの手で壱の胸をどんどん叩くけど、やっぱり壱はびくともしない。
男の子だ。
そんなこと、ずっと知ってる。
ようやく唇を離した壱は、伏せた目で私を見据えて。
「ほら、分かってない」
そんなことを言うから、さっきまで壱にふさがれていた唇をきゅっと噛むと、今度は指で、壱がそこに触れた。
ゆっくり、親指でなぞられる。
「触れられたらキスしたくなる」
それはさっき、私が壱の顔に触れたのと似た手つきで。
「キスしたらもっと欲しくなる」
抑揚のない声で言われて、身体が、ぞわりと震える。
「…そういうの、分かってないでしょ」
私の唇を撫でる壱の顔が、僅かに切なげにゆがむのを見た。


