「帰ったら連絡入れてって言ったろ…」
「まだ帰ってない…」
「バカなの?」
「ば…?」
「あの場面での、帰ったら連絡入れてっていうのは、このまままっすぐ帰れよって意味でしょ」
「なにその翻訳…無理すぎ」
いつもの調子を取り戻せたような気がして、笑みがこぼれそうになった時。
「無理じゃない」
壱が静かに言った。
「分かれよそんくらい」
…ああ、また。
私は壱の、左目の下にそっと触れる。
親指で、なぞるように。
最近、壱がよく怒る。
無気力で低温で感情の読みにくい壱の、きっと私だけが知ってる癖。
こんなふうに、させてるのは私なんだ、きっと。
「壱、怒んないで…」
笑ってる壱が好きだよ。
笑ってるって、私にしか分かんない顔で笑ってる壱が好きだよ。
だから。


