バイトはどうしたの?なんでここ分かったの?
そんな疑問が浮かぶけど、壱に手を引かれたまま、あまりに早いその歩調についていくのがやっとで。
速いよ、壱、待ってよ。
モールを出ても黙って歩き続ける壱の背中に向かって、
「壱…っ」
呼ぶと壱はようやく立ち止まった。
よかった、振り返ってくれる。
そう思った瞬間、強い力で抱きしめられていた。
それはもう、地から足が離れそうなほど。
だから私も震える手で、ゆっくり壱の背中に手を回す。
言わなきゃ、ちゃんと。
「壱、私、泣いてないよ」
まだ声が震えている。
「山村くんとは、昔話、してただけ」
うん、と耳元で言った壱が、抱きしめる力をゆるめて私を少しだけ開放し、大きな瞳を細めた。


