無気力系幼なじみと甘くて危険な恋愛実験



小さな風が吹いたと思った時には、もう私を通り越している壱が山村くんの胸倉を掴んでいた。



「ちょっ壱…っ?!」



椅子に座っているのに浮いてしまいそうな山村くんは、さっき道端でしていたのと同じ無抵抗のポーズで苦笑い。



うっすら額に汗をかいている壱の横顔は、見たこともないくらい冷たくて。



静まり返っている店内で、私は言葉をなくす。




「…なに泣かせてくれてんだ今度こそ殺すぞお前」




山村くんの胸倉を掴んだまま囁くように言った壱の声も、聞いたことないくらい冷たい。



言わなきゃ。

泣いてないよって。

泣かされたりしてないよって。



「…壱」



だけど、そう、名前を呼ぶだけで精一杯で。


声が、震えていた。


そっと、壱の腕を掴んで引く手も、震えていた。



山村くんの胸倉を掴む手の力を緩めた壱は、私の手をぱし、と掴んでそのまま足早にカフェを出ていく。